プーケットの濡れた砂 T
「ええっ・・嘘・・こちらへは来れないって言うの・・私をズッと一人っきりにしておく積りなの・・解ったわよ・・もう・・・来なくて・い・いっ!」
「ガチャン」
受話器を叩きつけるようにして電話をきると、
「ああん・もう・・バカ・バカ・・」
新妻由菜はバタンとベッドの上に大の字になって寝転がるのと、まるで駄々っ子のように手足をバタつかせ一人拗ねた仕草をするのであったが、それは空しいばかりであった。

ここはプーケットのとあるホテルの一室である。
多くのホテルや歓楽街が集まるプーケット島の西側ではなく、反対側の東側に位置するこのホテルの周辺は、環境も静かな波も穏やかで一年中泳ぎを楽しめるのが特徴である。
そんなホテルが由菜は大のお気に入りで、独身時代から何度も訪れており、新婚旅行先にもこのホテルを迷わず選んだ程である。

一周年の結婚記念日をこの思い出のホテルで夫と二人で過ごすべく一緒に訪れるはずであったが、どうしても夫の仕事の段取りが付かないということで、ひとまず先に由菜一人でプーケットを訪れているのだ。

しかし、待てど暮らせど、いつまで経っても夫はやってこない。
とうとう痺れを切らした由菜が日本まで電話を入れてみると、
「どうしても仕事の段取りが付かなくて行けそうに無いんだ・・すまないが一人で楽しんでくれ・・この埋め合わせは必ずするから・・・・じゃ・忙しいから・・切るぞ」
この夫のつれない対応に、由菜は完全に切れてしまったのだった。

「何よ・・もう・・私を一人ぼっちでほったらかしにして・・もう・・頭にきた・・こうなったら・・遊んでやるから・・」
由菜はベッドから起き上がると冷蔵庫の中から缶ビールを取り出し、オーシャンビューの綺麗なベランダに出て、そのピンク色の艶やかなナイトウエア姿を晒す。
そして、遠くで漁火が輝く夜の海を眺めながら、意を決したように一気に冷えたビールを飲み干すのであった。

由菜は資産家のお嬢様として生まれ、何不自由なくわがまま放題に育てられてきた。
その容姿は女優の釈由美子に似てすらっとした美人で,見るからに気が強くてわがままなお嬢様って感じの新妻である。
夫は彼女の父親の援助を受けてIT関連の会社を興し、今は軌道に乗って順調に業績を伸ばしている。
しかしながら、業績がアップするに連れて、夫は仕事に追われて新妻由菜に接する機会がドンドンと少なくなってきている。
そのことが我侭な由菜には大いに不満であった。

そんな日頃の不満を解消するべく、初めての結婚記念日には思い出のプーケットのホテルで、二人きりで愛を確かめようと約束をしたのに・・ああ・・それなのに・・。
本来なら、毎夜夫との愛を確かめ合っているはずだったダブルベッドで、新妻由菜は今夜も一人寂しい孤独な夜を過ごさなければならないのであった。


翌日の午前、ホテルのプライベートビーチには、その釈由美子に似た華奢な肉体を水着に包んで横たわる由菜の姿があった。
午前中をビーチで過ごし、日差しが強くなる午後からはホテルの部屋で昼寝をするか、サウナ、エステ、タイ式マサージで体の手入れをするのが、プーケットでの由菜の日課となっている。

今日の由菜スタイルは、釈由美子に似たお嬢様風若妻にはぴったりの真っ白で、一見可憐なビキニ姿であった、が、しかしながらである。
その下半身はというと、これが以外にも大胆にカットされたTバックになっており、その小ぶりで引き締まった真っ白い二つの尻肉を惜しげもなく南国の太陽の下に晒していたのだった。

Tバックの水着を身に着けることなど日本国内では決して考えられない由菜であったが、何故か海外では不思議なことに結構大胆になれてしまうのだ。
それは、日本人の目を気にしなくてもすむからか、はたまた周りの欧米人の際どい水着姿に刺激を受けて、抵抗がなくなっているのかもしれない。

やがて、ビーチで寛ぐ由菜の方に、いつものように一人の男が近づいてきた。
いや、彼は男というよりも、正確には少年と言うべきであろう。
彼の名前はサムット、年はまだ15才。
このホテルのプライベートビーチで働く現地人のビーチボーイだ。

「グッドモーニング・・」
「オハヨウゴザイマス」
毎朝、決まってトロピカルシュースを由菜の元に届けるのが彼の日課になっており、いつしか二人は片言の英語と日本語で言葉を交わすようになっていた。

白人系2世のその彫りの深い顔立ちとムエタイで鍛え上げられた鋼のような褐色の肉体を持ち合わせた美少年に対し、
「可愛い子だわ・・玩具にしたいくらいだわ・・」
日本を遠く離れたリゾート地で、一人ぼっちで閑を持て余している一人の新妻の開放的になった心の片隅に少しずつ淫らな悪戯心が芽生え始めていたのだが、昨夜の夫からの冷たい電話が、ついにその淫らな心の導火線に火を点けてしまったようだ。

彼女の今朝の大胆なTバックの水着姿が、その決意を象徴しているかのようであった。


続く


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