濡れて乱れた喪服 (前編)
「人間なんて呆気ないものね・・あんなにお元気だったのに・・」
助手席に座った翠川高嶺はぼんやりと前を見つめたまま独り言のように呟いた。
「そうですね・・」
普段は活発でヤリ手の女部長の意外な一面を見たような気がしてハンドルを握る佐久間勇人はどう答えていいのか解らず、かたせ梨乃に似たその横顔をチラリと見ながら、ただ曖昧な言葉を発するしかなかった。

「佐久間君・・ちょっと寄っていかない?・・お清めしましょうよ・・お塩じゃなくアルコールで・・うふふ・・どう?」
「ええ・・でも・・」
「気を使うことないわ・・主人はゴルフだし、私一人なの・・」
「そうですか・・じゃあ・・ちょっとだけ・・」

とある土曜日の午後、S商事の営業部長の翠川高嶺は得意先の社長の葬儀に参列していた。
親しくしていた人の死にショックを受け落ち込んでいた高嶺はこのまま一人で過ごすことに寂しさを覚え、運転手代わりに付き合わせた部下の若手社員佐久間勇人を我が家に招いて昼間からグラスを傾けることとなったのだった。

「ちょっと待っててね・・着替えてくるから・・」
「部長・・出来ればそのままで・・素敵な部長の喪服姿をもう少し観ていたいんですけど・・」
「ええ・・?・・変な人ね・・・・でも・・・いいわ・・わかったわ・・・・」

ブランデーとグラスをテーブルの上に置くと、高嶺は喪服姿のままのその見事なまでに熟れた女体を勇人の横に並ぶようにしてソファーに沈めた。

「男性って、喪服姿の女性に魅力を感じるって言うらしいけど、どう?私の喪服姿・・そそるかしら?」
酔いが廻ってくると高嶺はかたせ梨乃に似た顔に色っぽい笑みを浮かべながら勇人をからかう様に囁きかける。

「ええ・・もう・・最高っす・・部長の喪服姿・・」
勇人は既に反応をし始めている己の下半身を手で隠しながらモジモジしながら答える。

「うふふ・・佐久間君・・可愛いわね・・」
高嶺は誘うような含み笑いをしながら勇人の肩に顔を埋めるようにしてにもたれかかると、その手が勇人の太ももの上を怪しく蠢き始めるのだった。

「・・抱いて・・」
やがて高嶺の口から発せられた甘い声に一瞬勇人は自分の耳を疑った。


続く

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