アバンチュール初体験 (前編)
「あ・・すいません・・」
「ええ・・こちらこそ・・」
平日の昼間に一人で百貨店でぼんやりとウインドウショッピングしていた理美に一人の青年がぶつかって来たのだ。

「申し訳ありません・・お詫びにお食事でも・・ご馳走させて下さい」
その場に散らばった理美の持ち物を拾い上げながら、青年は人懐っこい笑みを浮かべ申し訳なさそうに誘いの声を掛けてきた。

「・・ええ・・」
理美は困ったような表情を浮かべながら言葉を濁した。
水野美紀に似た美貌の持ち主である理美は、時々男から誘いの言葉を掛けられることがあるのだが、いつもむべなく無視を決め込んでいた。
しかしながら、今日は何故かこの青年の誘いに心引かれるものを禁じえなかったのだった。

「お願いします・・近くに美味い店があるんですよ・・行きましょうよ・・」
ニコニコ笑いながら先に立って歩き出した青年の後を誘導されるように理美は歩き出していた。

青年の名は山名正也、先程の百貨店には営業で出入りしているそうで、今日も担当者に呼び出されて無理難題を押し付けられての帰りだと言う。
「もう・・むしゃくしゃして・・でもお陰であなたのような綺麗な人とランチが食べられて・・ラッキーだな・・・」
正也は明るく喋り良く食べた。
「嫌だわ・・今日は全然お化粧もしてなくて・・何だか恥ずかしいですわ・・こんなことならお化粧をしてくるべきだしたわ・・」
「そんな・・全然綺麗ですよ・・本当に・・」
「まあ・・お上手だこと・・流石は営業マンですわね・・」
理美もついつい吸いこまれるようにして楽しい時間はあっと言う間に過ぎていった。

「もうこんな時間か・・すいません・・次の仕事が・・又、いつでも連絡下さい、時間は自由になりますから・・」
正也は慌てて一人で外へと飛び出していった。


「どうしようかしら・・」
一週間後のある晴れた朝、正也から別れ際に渡された名刺を眺めながら理美は携帯を握り締めて迷っていた。
あの日以来、この一週間は平凡な日常を生活していた理美にとっては心ときめく毎日であった。

やがてダイヤルに乗せられた理美の細い指は何かを確信するように、ゆっくりと動き出した。

「やあ・・奥さん・・・お電話お待ちしてました・・今日のお昼?・・・・勿論OKですよ・・」
受話器から聞きえてくる正也の明るい声に反応し、理美の心は独りでにワクワクと踊り出していた。

「じゃ・・この前のお店で・・」
電話を切ると理美は慌しく化粧を施し終わると、鼻歌を口ずさみ着て行く洋服の見立てを始めるのだった。

「これがいいかな?・・やっぱりこちらの方がいいかしら?・・」
鏡の前で体をくねらす理美の形の良いヒップには、今までタンスの奥に眠っていて一度も身に付けることがなかった黒のTバックショーツが張り付いていたのだった。

続く

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