男 狩 り  (前編)
「奥さん・・あの映画・東京タワー・・・観ました?・・」
「ええ・・観たわよ!・・観た!観た!・・」
「でも・・あんなの・・現実にはねえ?!・・・」
「そうよねえ・・40過ぎの普通のおばさんに・あんな若いイケメンが・・・ねえ・」
「・・・黒木瞳みたいな美人じゃなきゃ・・・・」
スーパーの休憩時間に、パートのオバチャン達がお茶しながら、映画「東京タワー」の話で盛り上がっている。

「でも、奥さんなら解らないわよ・・結構、いい体してるもの・・」
パート仲間の伸子が聡子の体を突付きながら囁いた。
「ええっ・・やだわ・・そんなあ・・奥さん・煽てたって・・何も出ないわよ・・・・」
聡子はテレ笑いをしながらも、心の片隅ではまんざらでもなかった。

聡子は40歳の極々普通の家庭の主婦、まあいわゆるオバチャンである。
芸能人で言えば、まあ室井滋タイプって処だろうか。
決して美人とは言えないが、聡子自身、自分の体には結構自身を持っていた。
その形の良い大きな胸と締まったヒップラインは、十分に男の視線を引き付けるものであった。

現に今でも街を歩いていると、
「お茶しませんか?」
後から声を掛けられることがあるのだ。
しかしながら聡子が振り向くと、男は黙って逃げるようにして去っていくのだった。

「ねえ・・今度入ったアルバイトの岡本君なんかどう?・」
「彼ねえ・岡田准一にてイケメンだわねえ・・」
「彼・・ひょとして奥さんに気があるんじゃないかしら・・」
「まさかあ・・そんなことある訳・・・」
そう一笑に付しながらも、聡子には心当たりがあった。
時々誰かの視線を感じることがあったのだが、その時には必ずアルバイトの岡本研一の姿を目にするのだった。

「そう・・奥さん・・一度その熟れた肉体で誘ってみたら?・・案外・彼落ちるかもよ?!」
「そうかな・・」
伸子にひやかされながら、聡子はまんざらでも無い気分になりつつあった。

「ねえ・・岡本君・・今度お給料出たら・・二人で飲みに行かない?・・」
意を決した聡子は、ある日、仕事帰りの岡本研一を待ち伏せて思い切って声を掛けてみたのだが、
「ええっ・・本当ですか?!・・嬉しいな・・奥さんに誘ってもらえるなんて・・」
なんと、想像もしなかったような研一の嬉しそうな反応が帰ってきたのだ。
これには誘った当の本人の聡子の方が一瞬面食らってしまった程だった。

そして、いよいよ運命の給料日がやってきた。
その日の夕刻には、仕事を終え意気込んで待ち合わせの場所へと急ぐ聡子の姿があった。
この日の聡子の服装は、年に似合わないような体の線を強調したデザインの派手な服装であった。
しかもその大き目のヒップには、なんと生まれて始めて身に付けたTバックショーツが張り付いているのだ。
これはまさに、聡子にとっては一世一代の大勝負パンツと言えるものだった。


続く

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