美熟未亡人孔雀の舞 (T)
「ねえ、優子・・健介さんの何処が気に入らないって言うのよ・・お母さん・・彼、いい人だと思うけどなあ・・」
「そんなに気に入ったのなら・・・・お母さんがお付き合いしたらいいでしょ?・・」
「まあ、なんてこと言うのよ・・もう・・変な冗談言わないで・・・・」
娘の優子にしてみれば、ほんの軽い冗談の積りの何気ない一言であったが、何故か楓の心の奥深くに沁み込んでいくのだった。

「お母さん・・私、全くお付き合いする気ないから・・直ぐに断っといてよね・・ね、お願いね・・・」
「解ったわ・・でも、困ったわねえ・・お仲人さん、海外旅行に出掛けられちゃってて・・・しょうがないから、お母さんから直接お断りしておくわ・・失礼の無いようにしなくちゃね・・」
楓の心の中には健介の屈託の無い笑顔がぼんやりと浮かんでくるのであった。


その日の夕刻の、とあるオフィスでの出来事。
「おい、健介・・ボケっとしてないで・・仕事しろよな・・」
「・・・ハイ・・」
「課長・・こいつ、見合い相手に一目惚れしちゃったんですよ・・それで・・・」
「おいおい・・彼女はどんなカワイコちゃんなんだ・・」
「そんな・・みんなで虐めないでくださいよ・・」
「ワハハハ・・」
職場は爆笑に包まれるのであった。

その時、
「健介さん・・・受付にお客様が来られてますけど・・」
女子社員の一言に救われ、ホッとしながら健介は急いで一階の受付に向かうのだった。
「あちらでお待ちです」
受付の女子社員の指差す向こうに目をやった健介の目の中に、想像もしなかった一人の美しい和服姿の女性が飛び込んできた。
一瞬、健介は夢ではないかとわが目を疑った。
そこにはこの数日間、ずっと夢見続けてきた美熟女楓の姿が・・・・・。
実は健介が一目惚れをしたのは、見合い相手の優子ではなく、その母親の楓だったのだ。

楓は47歳、秋吉久美子に似た妖艶な中にも何処か幼さを残した和服の似合う美熟女である。
十周年前に夫を亡くし、その後は生け花教室で生計を支えながら娘の優子を女手一つで育てあげてきたのだ。
そして、その娘の優子の見合い相手が健介だったのだ。

「ごめんなさいね・・もう・・優子ったら・・」
「ええ・・大丈夫です・・多分・・断られると思ってましたから・・」
「私は健介さんのこと・・いい人だと思うんですのよ・・こんな息子が出来ればって・・」
ぞくぞくっとするような楓の色っぽい目で見つめられ、
「ああ・・なんとか・・したい・・・抱きたい・・」
健介のボルテージは否応無しに一気に跳ね上がってしまうのだった。

「あの・・もしよかったら・・今夜・・ご一緒に晩御飯でも・・もうすぐ仕事も終わりますから・・・」
思い切って勇気を振り絞った健介の目に、
「あら・・本当?・・嬉しいわ・・こんなおばさんでよかったら・・喜んで・・・」
まさかまさか、予想もしなかった無邪気にはしゃぐ楓の天使のような笑顔が飛び込んできたのだった。


「こんな店しか知らなて・・」
健介が楓を誘ったのは、会社近くの行き付けの洋風居酒屋であった。
「うううん・・・こういうお店・・私、好きよ・・」
若いサラリーマンやOL達で賑わう店内は和服姿の落ち着いた雰囲気の楓にはちょっと違和感があるのではと心配した健介であったが、以外にも楓は結構気に入っているようだ。
「こんな和服美人を連れやがって・・・」
あたかもそう言っているかのような店員や常連客のうらやむような目線が、健介をこの上なく幸せな気分にするのであった。

「健介さんて・いい人よね・・私だったら・・多分、健介さんのこと・・好きになったと思うなあ・・・」
久し振りに味わうアルコーの力も手伝ってか、時間と共に楓はすっかり打解け始めた楓には、妖艶な中にもどこか純な乙女の姿がダブって見えた。
「僕も・・お母さんのこと・・多分、好きになる・・・・いや、絶対に・・」
「・・無理しなくても、いいわよ・・でも、嬉しいわ・・ウフフ・・でも健介さんって・・か・わ・い・い・・・・」
この楓の一言が若い健介のハートに激しい一撃を加えてしまった。


「ああ・・楽しかったわ・・」
店を出ると、極自然な振る舞いで楓の方から腕を絡ませてくる。
「このまま、ホテルに・・いや・・ダメだ・・・」
健介は今直ぐにでも楓の熟れた体を抱きしめ、その濡れた唇を奪いたい衝動に駆られるのを抑えるのに必死だった。

その時、甘えるように無邪気に振舞う楓の口から信じられないような夢のような言葉が飛び出してきたのだ。
ねえ・ねえ・・・今度の日曜日・・家に遊びにいらっしゃらない?・・・何か美味しいものでも造りますわよ・・娘も出掛けていませんから・・」
「やった!・・・」
瞬間、健介は心の中で大声で雄叫びを上げた。

「ええっ・・本当ですか?・・・・よ・・喜んで・・」
健介は当に天にも昇りそうな気分であった。


そして、いよいよ運命の日曜日。
大きな花束を抱えて楓の家にと急ぐ健介の姿があった。


続く

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